第80章 母さんは彼らの唯一の妹を連れ去った!

秘書「?」

いや、ここで空気でも吸ってんのかよ。

藤原亮介は呆けたようにピアノを見つめたまま、少女がそこにいた頃の姿を勝手に重ねてしまう。喉の奥から、かすれた声が漏れた。

「……比べものにならない音だった」

比べものにならない、彼女。

秘書が近づき、首をかしげる。

「何ぶつぶつ言ってんすか」

藤原亮介は両手をぎゅっと握り、目に力を宿した。

「池田さん。俺、見つけたんです。俺の……」

「お前の何だ?」池田忠が怪訝そうに眉をひそめる。

「俺のクラッシュ……」

池田忠の平手が飛んだ。

「クラッシュじゃねえ!」

「おい、また惚れたとか言う気か? 前にバーで『クラッシュ』だの...

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